アメリカのエネルギー省がクリーン・エネルギー企業に対して総額20億ドル(約2,300億円)の債務保証を行っているようだ。産業振興策としてとても興味深い。
出典: Fed seeks to spur green energy investment with guarantees
The Federal government is backing investments in clean energy projects, providing $2 billion in loan guarantees to 16 companies.
If the company defaults on its loans, the DOE will step in and repay the investors. The guarantees are meant to spur investment and increase investor confidence in clean energy projects.
米国政府はクリーン・エネルギー分野の起業意欲や投資意欲を高めることを狙ったようだ。
興味深いのは、この政府による支援が出資でも融資でもなく「債務保証」であることだ。債務保証とは、債務者が債務を返済できなくなったときに返済を肩代わりする契約のことで、今回の場合で言えば、ベンチャー企業が銀行などから融資を受け、事業に失敗して融資を返済できなくなったとしても、アメリカ政府がベンチャー企業に代わって融資を返済してくれるのでベンチャー企業は返済義務を免れる、という大変ありがたい内容だ。なぜ債務保証が興味深いかというと、下記のような理由による。
- 政府はボトム・サイドのリスクを担保するが、アップ・サイドの利益を取ることはない。逆にベンチャー企業や投資家らはボトム・サイドのリスクが限定されている一方でアップ・サイドのリターンを狙える。
- 政府が実際にお金を出すのはベンチャー企業の事業がうまくいかなかった場合のみ。うまくいけば政府は負担を免れる。
- 債務保証は出資、融資ではないため、政府がベンチャー企業の経営に直接関与することはない。
つまり、起業家や投資家にしてみればリスクが限定されているのにリターンを狙える。債務保証したベンチャー企業のすべてが倒産することはないだろうから、債務保証額=政府の負担額、となるわけではない(もっとも、政府側でベンチャー企業を審査する担当官の能力が問われることにはなりそうだが)。政府が保証することでベンチャー企業が成功していけば米国経済の次世代を支える産業として国家への貢献も大きかろう。そんなわけで関係者すべてに利益が見込める施策と言えよう。
すでにクリーンテック関係の著名な企業らがこのプログラムの債務保証を受けているようだ。以前このブログで紹介したTeslaも入っている。
Applications for the guarantees were opened a year ago; recipients of the loan guarantees include Tesla Motors, Blue Fire Ethanol and Solyndra, a solar company. For the full list, see the DOE’s release.
さらに追加の債務保証を求めて希望者が殺到しているようだ。その数、143社!
Although 16 companies are receiving the guarantees, the pool of applicants included 143 companies asking for over $27 billion.
エネルギー消費大国アメリカは、クリーンテックを次世代の産業として国を挙げて取り組もうとしていることなのだろう。今回の施策はそんな国策を具現化するものとしてとても興味深い。
日本でも戦略的に重要な産業については、このようなプログラムがあってもいいのではないか。バイオやナノといった分野では昨今苦労しているVBが多いと聞くが、国家30年の計として政府のバックアップを期待したいところだ。
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