「Web2.0的」ベンチャーには「そこそこのPageViewはあるけど売上や利益に結びついてない企業」が少なくない。しかしそんな会社がGoogleあたりの大手企業に高額で買収されているのも例も少なくない。投資家としては、こうしたWeb系ベンチャーを財務的な数字以外に如何なる手法で評価すべきか悩ましいところだ。
そんな中、"Visitor Multiple"なる概念を使ってWeb系ベンチャーの価値を評価している例があったので紹介しよう。Visitor Multipleとは、会社の評価額(Valuation)を、その会社のサイトへの訪問者(Visitor)数で除して求めた数字で、日本語にすれば「1ビジター当りのサイトの価値」ということになる。下の表をご覧頂きたい。
出典: Glam still raising up to $200 million in cash and debt, announcement coming soon
Facebookの月間ユニークユーザー数(UU)が29百万人(2007/11、下表)との試算もあるので、上記の数字を改めて確認した上で評価しなおす必要はありそうだが、1ビジター当り20ドルぐらいの価値がついているというのは興味深い。Facebookはさすがに高額だが、やや異常値の雰囲気。
Web系ベンチャーは広告収入が主たる売上であることが多く、広告費はしばしばPVで換算される。PVの価値についてはこのブログでも以前取り上げたことがあるが(Pageviewの価値)、FacebookなどのSNSサイトで年間1~2円/PVといったところだった。
Facebookの例で言えば、下の表にもあるように2007年11月は29百万UUで144億PVを稼いでいる。1UUあたり、約500PV/月ということになる。PV単価をざっくり1円とすれば、Facebookの広告媒体としての価値は1UUあたり500円/月、年間6,000円(約6ドル)となる(これでも高めだから実際はこの数分の1の価格が世間一般の相場だろう)。上記の表ではFacebookのVisitor Multipleは153ドルなので、Facebookの価値は25年分もの売上を織り込んでいることとなる。いくらFacebookが急成長企業とはいえ、やはり行き過ぎだと感じる。
一方、Myspaceはどうか。Facebookに比べてMyspaceの数字はあまり公表されていないが、2007年6月に70.5百万UU/月、464億PV/月というデータがある(出典)ので、これを使うと約600PV/UUとなる。ちなみにこの数字はFacebookよりも高い。PV単価を1円/月とすれば1UUあたりの価値は600円/月、7,200円/年(約7ドル)となる。上記の表ではMyspaceのVisitor Multipleは20ドルだから、約3年分の価値を織り込んでいる計算だ。こちらは控えめな数字だ。
FacebookやMyspaceを例に上記の数字の意味を評価してみたが、使用した数字が若干不正確な面があるものの、Web系ベンチャーの評価手法としては使いやすいように感じる。
なお、サイトの価値を評価する際にはPVやUUだけでなくユーザーがサイトに滞在する時間も加味すべきとの動きもあるようで(例)、そこら辺りの関係も探求してみたいところだ。
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