日本のマスコミにロンドン証券取引所のAIM市場が取り上げることが増えてきたようだ。日経新聞にしばしば登場するようだし、日経ビジネス6月11日号には2ページに渡って紹介されている。日本の新興市場が低迷しているようなので、新たな活路を見出そうとしているように見える。
そうしたマスコミの論調は「ロンドンのAIM市場は活況だ。日本の新興市場も見習うべきだ」、と言っているように聞こえる。実際、AIMに上場されている企業数は2004年以降急激に増えており、2006年の新規公開数は462社に登る。日本の新興市場が概ね毎年100~200社ぐらいに留まるのを見れば明らかに上場企業数は多い。見習うべきところは見習うべきだろう。ただ、そうしたいいところしか報道されてように見えるのが気になる。
個人的にはAIM市場に上場した銘柄の流動性が少ないという声を良く聞く。興味がある人はAIMの公開情報を実際に調べてみよう。AIMが出している直近のレポートを開いてみると、レポートの中盤辺りから各上場銘柄に関する実際の取引データが掲載されている。その膨大なリストのうち、試しに一番最初に掲載されている"@UK"という会社のデータを見ると、発行済株式数が約3,760万株であるのに対して2007年5月中の取引出来高は13万株となっている。1ヶ月の売買高が全株数の1%も満たない、これはどうしたことか。
ちなみに、楽天の発行済株数は1,306万株、これに対して6月19日の出来高は19万株。ざっくり言って1日で発行済株式の約1%が売買された計算だ。単純に月に換算すると、毎月20%の株式が売買されることになる。もうちょっと小さな会社の例としてミクシィを見ると、発行済株数74,600株に対して、6月19日の出来高は1,200株。こちらも一日で2%近くの株式が売買される勘定だ。もちろん人気のある銘柄もあれば人気のない銘柄もあろう。それにしても、1ヶ月の売買高が全株数の1%も満たないのでは、流動性に欠けているといわれても仕方ない。
たまたま"@UK"の例だけを取り上げたが、リストを見ていくと活発に取引されている銘柄もあればほとんど取引のない銘柄もある。要は、一概に「AIM市場は成功している」と単純にいえるものではなく、実態はもう少し「まだら模様」なわけだ。上場すればいい、上場がゴールという訳ではなく、AIM上場後も各企業には厳しい試練が待ち受けているというのがより正しい理解だと思う。
こうしたAIMの実態を踏まえて、日本の新興市場を活性化させるためには何が必要だろうか。個人的には下記の2点が重要だと考えている。
- 投資家の期待を裏切らない。コミットしたことは実行する。
- 会社の実態をより反映しやすい情報開示を行う。
- 新興市場銘柄を担当するアナリストを充実させ、投資家の判断を支援する。
皆さんはいかがお考えだろうか。
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