最近、日本の大手VCが相次いでファンドを連結し始めたようだが、多少混乱気味に見える。
連結会計の意味は、親会社と子会社を一体的に見ることでグループ全体の経営の実態をより的確に表現し、殊に子会社を使った粉飾決算を防止することにあると理解している。VCの主たる事業は投資事業組合(ファンド)を運営して報酬を得ることだが、果たしてこのような投資事業組合をVC本体に連結することで、全体の状況を的確に表していると言えるだろうか。
例えば、あるVCが総額100億円の投資事業組合を設立して50社に投資するとして、こうした投資事業組合を5つ運営していたら、あわせて500億円、250社に投資していることになる。VC本体の会計にファンドを連結するとは、投資した250社の決算に基づいて各投資事業組合の決算を取りまとめ、これをVC本体の会計に連結することを意味する。やや誇張して言えば、従業員数十人規模のVCが250社の巨大企業グループ並みの会計処理を行わなければならないということだ。
VCの事業はこうした投資事業組合の運営であるため、VCの決算と投資事業組合の決算を一緒にすべきというのは一見シンプルに思えるが、連結することで実態が見え易くなるかと言えばそうでもない。VCは投資事業組合(ファンド)を運営することで収益を上げているのだが、この収益は大きく2つの種類があって、一つは管理報酬(ファンド残高に一定の割合をかけた定額手数料)、もう一つは成功報酬(投資が成功した場合にもらえるご褒美)になっており、管理報酬で日々の資金繰りを維持し、成功した投資からアップサイドを狙うという収益構造を持つ。投資が失敗しても損失を補填しなければならないというようなダウンサイドはないことに留意が必要だ。たから、例えば投資事業組合の運用状況が良くない場合、これをVC本体に連結するとVC本体は大きな損失を抱えているように見えるだろうが、投資事業組合が損失を出しても、VC本体の資産が直接毀損するわけではない(ただし、失敗が多いVCは投資家の信頼を失い、事業が継続できなくなると言うペナルティを負う)。こう見ていくと、投資事業組合をVC本体に連結することは、VCの経営状況を正しく表しているとは必ずしも言えないのではないだろうか。
以前は投資事業組合をVC本体から切り離して個別に会計するのが通例だった。しかし、例のライブドア事件で投資事業組合が粉飾決算の手段に使われたことから行政が規制に乗り出したようで、投資事業組合を運営本体に連結させようという圧力がかかっていると聞く。規制はやむを得ないにしても、それにかかるコストは相当なものになっていそうだ。そもそも、VCが株式公開していることの意味を問い直さなければならないが、それと同時に投資事業組合の決算や情報開示のあり方について、より実情を反映する会計方式が求められるところだ。
最近のコメント