福島原発の事故以来、世界のクリーンテック業界が騒がしい。今後のエネルギー政策の方向性や次世代の本命技術を巡って百家争鳴状態だ。
原子力を代替する手段として注目を集める太陽光発電だが、その中でも事業規模の大きさが特徴の「集光型太陽光発電」における著名企業2社で新たな動きがあった。
BrightSource Energy社が$201Mの資金調達をした。シリーズEラウンドだそうだ。
引用: BrightSource Raises Another $201M for Solar Thermal
Greentech Media, March 31, 2011BrightSource Energy of Oakland, Calif. has raised $201 million in a Round E, bringing its total funding to more than $530 million in private equity. That funding is in addition to a federal loan guarantee of $1.3 billion. The investors include Alstom, a French power plant player, as well as the usual suspects -- Vantage Point Venture Partners, Alstom, CalSTRS, DFJ, DBL Investors, Chevron Technology Ventures, and BP Technology Ventures, together with new investors.
BrightSourceは今回の調達額を含め、累計で$530M以上を集めたようで、更に連邦政府から受けている13億ドルの債務保証を合わせると、総額で18億ドル(約1,500億円)もの資金を集めたことになる。アメリカのベンチャー投資の規模は総じて日本よりも大きいが、ここまでの規模になる例はそれ程多くない。ベンチャー投資というよりは、グロース投資、あるいはインフラ投資というべきだろう。投資家の顔触れはVCではVantagePointやDFJ、金融系ではMorgan Stanley、事業系では石油会社のBPやChevronが入っている。Googleも出資しているようだ。ピカピカの顔触れだ。
これだけの資金を投じたこともあり、やることもデカイ。集光型の太陽光発電(太陽熱発電という方が正しいでしょうね)のプラントを米国のあちこちに持っているようで、1ギガワットを超えるクラスの発電設備に複数関与しているようだ。ちなみに、福島原発の発電機6機を合わせた出力は4.7ギガワットになるらしいが、福島第1原発全体の規模と比べると、1ギガワットという出力の大きさがなんとなくイメージできる。
発電出力は大きいが、それなりの資金をつぎ込んでいる。果たして発電コストがどうなるのか気になるところだが、政府の支援も取り付けて脇目も振らずに突き進むあたり、いかにもアメリカ的だ。この会社がいくらでIPOするか、非常に注目される。
アメリカにはこんなBrightSourceのような注目のベンチャー企業もあるわけだが、その一方で静かに退場していく企業もある。
引用: Emcore Acquiring CPV Firm Soliant for $450K
Greentech Media, March 28, 2011
Emcore (NASDAQ:EMKR) is acquiring Soliant, the rooftop concentrated solar company, according to a reliable source. We're awaiting a response from the involved parties but have gotten a verification from other sources close to the deal.
And the sale price is, drumroll please, $450,000.Soliant had raised more than $29 million in venture funding from Rockport Capital, Nth Power, Rincon Venture Partners, Convexa, Trinity Ventures, and GE Energy Financial Services.
Soliantという集光型太陽光発電(こちらは太陽電池タイプ)の会社が45万ドルで売却されたという記事が出された。Soliantは$29Mの資金を集めながら、ほとんど二束三文で売却されてしまったことになる。投資家の顔触れも決して悪くなかったし、有名な企業だったが残念な結果だ。
原発をめるぐ今後の方向性がぐらついている中で、日本でも海外でもクリーンエネルギーに対する期待が高まる方向にあることは間違いなかろうが、一筋縄でいくものでもない。成功するまでのコストは大きく、失敗するリスクも少なくない。肝を据えて取り組む必要がある分野だ。
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