6月28日の週にTeslaがIPOする予定だ。注目ベンチャーだけにどのくらいの価格がつくか楽しみだ。
Tesla Mortorsと言えば数年前から盛り上がってきた電気自動車ブームの中心的存在で、スポーティな電気自動車が有名だ(関連記事)。最近ではトヨタ自動車が出資して話題を呼んだ。
Yahoo Financeによると、売上は111百万ドル、約100億円ちょっとあたりだ。1年間の売上成長率がプラス659%とあるから、7倍以上に膨らんだようだ。(下記参照)
出典: Yahoo Finance
Financial Highlights | |
Fiscal Year End: | December |
Revenue (2009): | 111.90 M |
Revenue Growth (1 yr): | 659.30% |
Employees (2009): | 514 |
IPOに伴う公募予定価格は14~16ドルだという。米証券取引委員会(SEC)に開示されている資料によれば、発行済株式数は普通株が約60百万株、優先株(AからEまで)が約209百万株の合計269百万株となっており、仮に公募価格を$15とすると、公募価格ベースの時価総額は約40億ドル($15×209百万株、増資前)となる。(訂正:16億ドルとの説が流れている)
売上高1億ドルに対して時価総額40億ドルとは、不景気も吹き飛ぶ高額さで非常に注目される。もちろん、今後注目される高級セダン"Model S"なども含めた業績急拡大を期待した数字であろう。この価格設定には米国内のメディアでも諸説あるところだが、今後の動向に注目したい。
ちなみに、先にリンクしたSECの情報では日本の目論見書よりも細かな情報が開示されているので雰囲気だけでも皆さんに味わって頂きたい。公開企業の情報開示に対する意識の差を感じる。
ところで、Teslaの陰で、IPOを延期した著名企業がある。太陽電池の注目ベンチャーSolyndraだ。
Solyndraは米国期待の太陽電池モジュールのベンチャーで、円筒形の太陽電池モジュールで高効率な発電を目指している。これまで$950百万ドル(約900億円)の資金を調達し、加えて米国政府(エネルギー省)から$500百万ドル以上の債務保証も受けており、資金調達力は圧巻だ。このベンチャーがIPOを一旦キャンセル(Withdraw)し、一種の転換社債によって$175百万ドルを私募調達するという。引用: Solyndra nixes its IPO, but brings in $175M to keep the ball rolling
June 18, 2010 | Camille RickettsSolyndra, the maker of cylindrical solar cells that filed to go public late last December, has withdrawn that filing from the SEC, choosing instead to raise $175 million by selling convertible promissory notes to some of its existing investors. The news spells trouble for the rapidly growing company, and its thin-film solar peers.
キャンセルの理由は不明だが、先に引用した記事によると、売上が計画($300百万ドル)を大幅に下回っているとか、エネルギー省による債務保証に義務付けられた監査において、監査人が債務について懸念を示したことなどが囁かれている。また、最近IPOしたグリーンテック系企業の株価が低迷していることも延期の理由だったようだ。
...it’s still falling far short of the $300 million it had hoped to get from its public sale.
... Both biofuel maker Codexis and Chinese solar firm Jinko Solar went public in recent months, with shares selling at the low end of their price estimates.
注目のグリーンテックベンチャーと言えども、景気後退には勝てない。無理やりIPOするのではなく、機が熟すまで待つというわけだ。アメリカではIPOのキャンセル(Withdraw)は珍しくない。きちんとした数字は見てないが、IPOを申請した会社のうち、何割もの会社がWithdrawしている。柔軟と言えば柔軟だ。市場環境を見ながら、理に適わなかったら潔く撤退することが日常的に行われている。Withdrawもまた健全さの市場システムの証と見てよかろう。
TeslaとSolyndraはベンチャー企業としてはどちらも日本ではありえないぐらい大きい。如何にもアメリカ的なベンチャーのあり方であり、これがそのまま日本に馴染むかどうかはわからないが、参考にすべきところはしたいものだ。
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