ベンチャーキャピタルを取り巻く環境は昨年の秋ぐらいから投資マインドが改善してきている気がするが、一方でまだまだ過去の柵にとらわれて動きが取れないところも少なくない。いち早く景気回復した中国や韓国、台湾と比べても日本が足りない。何か抜本的な枠組みの変更が必要だ。
アメリカではVC業界発展の背景に、エリサ法(ERISA : Employee Retirement Income Security Act 1974、従業員退職年金保障法)の果たした役割が大きいといわれる。たとえば下記のページから引用しよう。
引用: VCF出資者としての年金基金
米国のベンチャーキャピタル投資の発展史を眺めてみると、1981年にERISA(従業員退職年金保障法)による年金基金の運用規制緩和で、年金基金のベンチャーキャピタル・ファンド(VCF)への投資が解禁されたことの意味は大きい。ERISAの規制緩和は、当時のキャピタルゲイン課税の引下げやPCなど新しい技術革新の進展と相俟って、1980年代以降の米国VCFの規模拡大に貢献し、結果としてVC投資の意義への社会的認識も大いに進んだ。同時に、その後の米国VCFの主たる出資者は年金基金となり、最近でも米国VCFの約半分は年金基金が出資している。
エリサ法については日本では語られることはほとんどないが、年金基金が危機に瀕していた80年代のアメリカにおいてエリサ法が出来たのは興味深い。その背景や意義を理解することは重要だ。私自身、きちんと研究しているわけではないが、VCとしての視点では下記のような影響があったと聞いたことがある。
- ERISA法により、年金基金はVCファンドに出資するよう促された(噂では、P・F・ドラッカーがベンチャー育成が国家経済の将来に有効であることを説いて議会を動かして法制化され、年金基金はVCファンドに投資せざるをえなくなったという)。
- その後、80年代にIT系を中心に多くのベンチャー企業が誕生し、成長した。70年代のものも含めればApple、Microsoft、Sun、Ciscoなど国の経済を支える原動力となる企業が生まれた。
- その後も年金基金はVCファンドに出資する主たる投資家となり、バイオやクリーンテックなど次々に新しい分野での産業革新を起こす原動力になっている。
日本の国民年金、厚生年金も危機的状況だと聞いているが、金利の低い日本の国債やぱっとしない上場株式で運用していてもたかが知れている。思い切って年基金の一部(たとえ1%でも十分!)をベンチャー投資に回すような法律などできないものだろうか。
もちろん、今の日本の業界体制では不安だ。起業家、支援者、情報開示の在り方、失敗した場合の在り方など、あらゆるところでレベルアップが求められよう。しかし、明日の日本を担うベンチャーが本当に出てくるとしたら魅力的だ。
日本の閉塞感を打破するため、みんなで世論を盛り上げませんか?
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