Sequoia Capitalが2008年10月に有名なプレゼンテーションを打った。墓標に刻まれるR.I.P.(Rest in Peace:安らかに眠れ)というタイトルで始まるショッキングな内容のプレゼンテーションで、アメリカVC業界に留まらず日本でも随分と話題になったので、ご覧になった人も多いことだろう。(まだ見てない人はこちら)
ところで、このプレゼンテーションが行われたミーティングでコメントしたパートナーのうち、二人がSequoiaを辞めたそうだ。辞めたと報じられているのは、Eric Upin氏とMichael Beckwith氏の二人。どちらもSequoiaでヘッジファンドを立ち上げるべく、昨年Sequoiaに入ったパートナーだ。
引用 RIP: Sequoia Capital's hedge fund?
Sequoia Capital partner Eric Upin has left the storied Silicon Valley venture capital firm to work at investment management firm Makena Capital Management, according to Forbes.
This news follows a report earlier this week that another Sequoia partner, Michael Beckwith, has also left the firm.
この二人は昨年10月のミーティングで下記のようなコメントをしていた。二人とも的確なコメントをしていたと思われるだけに、今回の辞任は惜しい話だ。
Eric Upin氏
- This could be at least a 15-year downward cycle, judging by historical trends; the credit market will take a long time to recover
- Startups need to deeply cut expenses, and throw out existing projections
Michael Beckwith氏
- A dramatic recovery is unlikely
- Spending cuts will accelerate through this quarter and into next year
- Only lean companies with proven sales models will be acquisition targets
これら二人が辞任に追い込まれた理由について、VentureBeat誌では資金を集めることが出来なかったから、としている。ヘッジファンドの人と直接話をしたことがないのでわからないが、昨今の相場急変でヘッジファンドは損失を出すところが多く、新たな資金集めが難しいというような話はしばしば耳にする。
このご時世では新規に資金を集めるのも難しいが、既に出資を約束した資金まで反故にされるケースが出てきたようだ。
ファンドの世界では"Capital Call"と呼ばれる仕組みがある。ファンドの資金を、ファンドの立ち上げ時にすべて一括して出資者から集めるのではなく、いわば分割払いで集める仕組みだ。ファンドを運用する立場の者(一般にGeneral Partner、略してGPと呼ばれる)が、ファンドからの投資が進んでファンドの資金残高が一定量を下回ったときに"Capital Call"を発し、出資者(一般にLimited Partner、略してLP)はそれのCapital Callに従って所定の金額をファンドに払い込むという趣旨の契約をあらかじめ交わしておくわけだ。こうすることで、当面使うあてのない余剰の資金をファンドにおいておかなくても済むので、ファンドの運用成績が向上するという利点を持つ。
ところが、昨今の景気低迷でこのCapital Callに応じないLPが出てきたという。LPが資金を出してくれなければ、VCは新たな投資が出来ない。これはVCにとっては極めて深刻な事態だ。
Venture firms have had trouble making "capital calls," or drawing on the money they'd been promised by investors in their funds. Some of those investors, including major universities, have lost billions in value in their investment portfolios because of the recession and can't provide the money they'd intended for venture firms. Sequoia may have had difficulty raising the intended money for a more hedge fund-like effort, Forbes guesses; tellingly, top rival venture firm Kleiner Perkins has faced similar liquidity issues recently.
LPがCapital Callに応じない理由は様々だが、たとえば上記引用のVentureBeat誌によると、主要大学などの大口出資者(米国の大学は巨額の運用資金を持っている)が景気後退によって多大な損害を被り、資金をVCに振り向けることが出来ないというものだ。Kleiner Perkinsでも類似のトラブルが起きているとのこと。何とも難しい局面に入ってきたものだ。
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