Expediaが株式を非公開化するという噂がネット上で報じられている。
引用: Rumor: Travel site Expedia may go private
2009/1/9 VentureBeat誌
この噂の真偽の程は定かではないが、「ネットにおける大企業がスケールメリットを活かせなかった例」になるかも知れず、興味深く思っている。
Expediaは日本ではあまり聞かないが、欧米ではオンラインによる航空券やホテルなどの販売仲介業者として有名な企業だ。
「スケールメリット」は多くの業界に共通する経済原理だが、ネットの世界でもこのスケールメリットの威力は絶大で、大きな企業ほどより強い競争力を持ち続けることができるものだ。Expediaもそうしたスケールメリットを活かせる立場にいた。Expediaの直近の年間売上高は30億ドル(約3,000億円弱)。米国大手航空会社のAmerican Airlineの売上高が240億ドル、UAが207億ドル、Deltaが206億ドルといった水準で、年商ベースでいえばExpediaはAAの8分の1といったところだ。この規模を大きいとみるか小さいとみるかだが、一介の販売会社ながら、重厚長大産業の代表のような航空会社の数分の1程度の事業規模を持つという意味では、大きいと感じる。
そうしたスケールがあれば事業も順調に行きやすいのではないかと感じるが、そう簡単でもないらしい。
実際、株価は軟調だ。1年前の4分の1程度の水準、PERは7倍程度だ。最近の市場環境の影響を受けているとも見れるし、この不景気で航空機の需要も減る可能性は高いだろうから、株価が軟調になるのも無理ないが、年率10%程度で安定的に増収してきた企業にしては安い水準だ。
また、最近ではExpediaよりも新興のネット販売業者のほうがいいサービスを提供しているようだ。VentureBeat誌の記事を引用すると、
Expedia’s site is from another era, by which I mean the 90s. It’s boring and it hasn’t changed much in recent years. A range of smaller travel sites have sprung up, meanwhile, that offer sophisticated new features for helping people save money on travel. Farecast, for example, predicts future airline ticket prices for trips you’re interested in making (and Microsoft bought it for $115 million).
2006年に拙ブログにて「旅行関連のネット企業が流行っている」と取り上げたことがあって(2006年のエントリー)、旅行サイトとしてViator, Homeaway, Luxury Link, Gusto,,,といったベンチャー企業に投資資金が集まっていると書いた。その後も、Farecast、Kayak、Sidestep、TripITといった企業に対してVC資金が巨額の資金を投じてきたようだ。そうした新興ベンチャーの方が、サービス的にはExpediaよりも上だというわけだ。
ネットの世界でスケールメリットは重要だが、スケールメリットさえあれば未来永劫競争に勝ち続けることができる、というわけではなさそうだ。
米国オンライン航空券市場の動向は今後もまだまだ興味深い。Keep Watchingしていきたい。
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