VC投資論の9回目はVBの目から見たVCの功罪について見ていたい。VCから投資資金を得ることがどういう意味を持つのか、そのあたりを整理した。
まずは、「功」から挙げてみよう。
- 成長資金を得られる
VCに投資してもらうことのメリットの第一は、何といってもこれだろう。成長するベンチャー企業に投資するのがVCの仕事だ。担保は無くとも成長できる見込みが十分あればVCから資金を提供してもらえる。使いようによっては魅力的だろう。 - スピードアップ
VCからの出資によってVBは経営資源に余裕ができ、人件費などに積極的に投資することが可能となる。その結果、VC資金に頼らずにいる場合よりも一気にすばやく成長できる可能性が高まる。 - 公開企業になるチャンスが増える
VC資金を活用することで、高い成長を実現しやすくなり、株式公開できる大きさまで成長出来る可能性が増える。VC資金に頼らずとも大きく成長して公開企業になることも可能であろうが、要は程度の問題で、VC資金を使った方が成長力を高め、資金繰りに余計な苦労をすることも減ると言えるのではないか。 - 助言を得られる
VCは公開を目指すVBに数多く接しているため経験豊富で、様々な業界の人(弁護士、証券会社、他投資家)との人脈も豊富だ。そうした情報を持つ人が株主になることで、経営上の問題を解消する有益な助言を期待できよう。
次に、「罪」の側面を見てみよう。
- 成長スピードを出さないとならない
VCは成長性を見込んでVBに投資する。成長性を見込めなかったらVCは投資しない(その場合、VC以外からの資金調達を考えるべきだ)。ちなみに株式公開した後でさえ、投資家はVBの成長を見込んで株を買う。成長しえないのであれば売り浴びせられるから新興市場へは行かない方がいいだろう。VBに投資するVCや投資家はそのVBの成長を期待しており、殊にVCはこれを実現するようVBに圧力をかけるだろう。圧力の強さは概ねVCの持株比率に比例するもので、VC比率が高い程、成長へのプレッシャーも強い。米国のVBではVCの持ち株比率が過半数を超えることも多いので、プレッシャーはむちゃくちゃ強い。VCの期待をそこねると、VB経営者は首になることも覚悟しなければならない。このように、VCから資金を受けたり、株式公開して投資家の資金を受けるということは、見返りとして成長スピードというプレッシャーを受けることを覚えておくべきだ。 - コミットメント
上記に関連するが、VCや投資家はVBに対して将来をコミットするよう求める。今年度の業績は○○億円、来年度は○○億円、というように、具体的な数字によるコミットメントを求めらる。 - IR、レポーティング、説明責任
コミットした事業計画に対して実績がどうか、VBはVCに対して説明する義務を負う。計画どおりに行かなかったら大変だ。VCが納得しなかったら信任は得られない。信任を得られないと、例えば将来資金が必要になったとき、追加の資金を出してもらいにくくなる。 - 出口
VCは投資の「出口」を求める。VBはIPOかM&Aによる売却の機会をVCに提供しなければならない。成長しないまま、ずっと同じ規模に安住していることVCは許さない。 - 経営権確保の問題
VCなど外部の投資家の持ち株比率が高まると経営権に影響してくる。VCが過半数の株を持つようになると大変だ。持ち株比率は慎重に設計しなければならないだろう。 - 助言を得られるとは限らない
VCの出資を受けたからといって経営に必要な助言を得られるとは限らない。VCも人の子。経験や人脈に個人差はあるし、得手不得手もある。いい担当者にめぐり合えればラッキーだが、そうでもないこともあると言う。
このようにVCからの資金を受けるということは功と罪の両面がある。それらを十分わかった上で、じっくりとVCと付き合おう。
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