サイバード、株式非公開に--堀ロバート社長と投資会社が公開買い付け
サイバードホールディングスは10月31日、投資会社ロングリーチグループの下でマネジメントバイアウト(MBO)を行い、株式を非公開化することを明らかにした。
(中略) MBOをする理由について、サイバードホールディングスでは、モバイル広告を中心としたモバイルインターネット市場が急成長期にあり、中長期的な企業価値を向上させるためには短期的な足元の業績に左右されない先行投資が必要と判断したためとしている。
サイバードの業績(2007年3月期)を見ると、売上高は前年比約1.5倍の23億円、しかし当期利益は▲78億円(損失)と苦戦しているようだ。赤字が大きいのは何か特別損失を出したのだろうか。サイバードのIRサイトはアクセスが殺到しているようでデータをダウンロードないため詳細は不明だが、前年より大幅赤字なのは何か事情がありそうだ。
そんな状況を受けてか株価は冴えない。2005年前半に40万円近くまで高騰した株価は2006年後半から下がり続け、今年9月には3万円近くまで下げた。その後やや回復したものの、バイアウトの価格である6万円は公開した頃の株価水準とそれほど変わらない(株価は分割反映後)。過去6年の公開期間中、短期的な売買で儲けた投資家がいたかもしれないが、公開時の株価水準とバイアウト時の株価水準が同じということは、全体をならしてみれば公開してから投資した株主は儲けていないことになる。損した株主も少なからずいたはずで、株主の期待を裏切ってきたことになる。そうした株主からの風当たりもきつかったことだろう。
非公開化というのは並々ならない決断だ。手続きは煩雑だし、何より世論が厳しいだろう。レックス・ホールディングスの時は、随分と新聞でも叩かれたのは記憶に新しい。
また、今回のMBOにはファンドの資金が絡んでいるので、非公開化の後、株式公開や売却によりファンドが保有する株式を売却する「出口」を設けなければならないはずだが、これまで投資家の期待を裏切ってきたわけだから、非公開化したのち再度株式公開しようと思っても、そう簡単に投資家が受け入れるとは限らない。つまり、「出口」は簡単ではない。それでも非公開化したいというのだから、よくよくの事情があったのだろう。
サイバードの赤字の詳細を調べないとMBOに踏み切った経営陣の胸のうちを探ることは出来ないが、背景にはモバイル・コンテンツ関連事業の市場構造が変化してきており、現状の延長では限界が見えてしまったということではないかと憶測している。だから、現状の延長ではなく、思い切った手を打つため、一度非公開化してじっくりと新事業に取り組んで成長を目指し、うまくいったら再び上場する、というようなシナリオを描こうとしたのではないか。
株式非公開化は日本でもしばしば目にするようだが、アメリカでもよくあるようだ(参考記事)。市場の状況に応じて最善の策を考えたら非公開化だった、ということなのだろうか。ダイナミックであるのはいいのだが、誰かの利益を損なうとしたら問題だ。
株式公開とは何なのか、改めて考えさせられる出来事だ。
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