欧米のバイアウト市場に投資される金額が$4,400億ドルに達したそうだ。今の為替レートで換算すると約53兆円となる。Economist誌の報道によると (原文)
Last year the value of private equity deals in Europe and America touched $440 billion, well up on the year before.
つまり、ヨーロッパとアメリカで2006年にプライベートエクイティ(この場合はバイアウト)に投じられた資金は4,400億ドルだという。
53兆円といわれてもぴんとこないので、近そうな数字を挙げてみると、
- 平成17年度の日本の一般会計歳入金は89兆円
- 2003年のアメリカ国防費は4,706億ドル(約56兆円)
- 平成19年1月のマネーサプライ(現金部分)は73.1兆円
つまり、バイアウトに投じられた53兆円という数字は、アメリカの国防費と同程度、日本の国家予算の半分とちょっととなる。実に大きなインパクトを持つ数字だ。この資金はどこに向かっているのだろうか。
厳密な分析はできないが、最近しばしば目にするのが上場企業の非上場化だ。上場企業をバイアウトファンドが買収して一時的に非上場化し、必要な措置を施して利益の出る体質にしてから再び上場させるような話だ。誰もが知る大企業もそのターゲットになりうる。たとえば、今アメリカでは経営危機がささやかれるクライスラーがそのターゲットになっているという。日本の新聞報道でも似たようなケースを目にすることが増えた。
上場企業が非上場を目指す理由は何であろうか。上場していると四半期ごとに利益を計上しなければならないので短期指向になりがちだからとか、意思決定しやすくしたいとかいうことであろう。でも、そう簡単に非上場化されては困る。何のために上場したのかということを突き詰めて考えないと株主は浮かばれない。
バイアウトの攻勢は資本主義の新しい大きな流れであることは間違いないが、資本主義の意味もあらためて問い直すきっかけになっているようだ。
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