SOXの嵐がアメリカだけでなく日本でも吹き始めようとしているらしい。ご多分に漏れずVC業界もだんだんと会計基準の壁が高くなりつつある。そして、会計の透明性を高めるために、従来よりも多くの経営資源を投入しなければならない時代となった。
会計の根底にある思想は「会社のありのままの状態を、信頼しうる客観性を以って表現すること」なのだと思う。信頼できない会計は意味がない。財務諸表を作るからにはそこに現れる数字は信頼出来なければならない。第三者から資金を集めて運用しているVCとしても、その運用状況を表す数字は信頼できるものでなければならない。当然のことだ。
ところが未公開株の世界ではこれが容易ではない。今は売上が十分でないベンチャー企業でも、半年後には商品がヒットして売上が飛躍的に向上するかもしれない。でも向上せず現状のままかもしれないし、資金が切れて倒産するかもしれない。そんなベンチャーをどのように査定して財務諸表に計上すべきか? VCファンドから投資した企業がたまたま事業の拡大が遅れた場合、これをいかなる基準で財務諸表に計上すべきだろうか? これらについてしっかしした基準があるわけではなく、会計基準という意味でまだまだ発展途上なのが現状だ。アメリカではNVCAの基準があるしヨーロッパではEVCAの基準があって、どちらもなるほどと思わせる内容なのだが、それにしても現場の恣意が入る余地を完全に排除することは出来ず、結局のところ運用者の善意に任されている。
私見だが、VC業界の会計の透明性を高めなければならないのはもちろんだが、その一方でベンチャー業界には財務諸表に乗らない「期待値」と、それを実現する実行力や運のようなもののウェイトも大きいのも事実だ。従って、VCとしては会計の精査に必要以上の時間を使いすぎることなく、むしろ投資した企業の価値向上にこそより多くのリソースを費やすべきだと考える。結局のところ、VC業界においては会計の信頼性と同じくらい、VCそのものへの信頼性というものが重要なのだと考える。
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