eBayによるSkype買収はどうやら本当だったようだ。買収総額は26億ドルだというが、今日はこの値段について考えてみたい。財務的な話しが中心になります、ご容赦を。またまたSkypeネタですみません。
Skypeの主力商品は無料で高音質な電話システムで、契約者数が54百万人、今年の売上見込が60百万ドルだという(以下、百万をMで表記)。会社の買収額$2,600Mを売上高$60Mで単純に割り算すると43倍となる。つまり、現在の売上高の43倍の価格で買収したことになる。ぱっと見では法外な値段に見えるが、これをどう評価したらいいだろう?
考えられる鍵の一つは将来のキャッシュフローの潜在力、もう一つはeBayにとっての顧客獲得コストではないか。
まず、Skypeが今後どの程度のキャッシュフローを生むか試算してみよう。
私自身Skypeを愛用しており、米国に住んでいるので日本とのやりとりには専らSkypeを使っている。私の周りではSkypeユーザはそれ程多くないので、Skypeから固定電話にかけることになる。通話の品質は落ちるが、それでも通常の電話に比べるとコストが圧倒的に安く、正確なところはわからないが1時間話しても通話料はせいぜい1ドルぐらいの感覚で使っている。半年前に購入したSkype-Outのチケットはまだ3ドル分ぐらいしか使っていない。ヘビーユーザになれば年間に10ドルぐらい使うこともありえなくない。こうした実際の体験を踏まえると、全Skypeユーザの10分の1の人が、Skype-Out等で年間にSkypeに10ドル使う、というのは十分ありえるシナリオだと思う。
実際、現在のユーザ数54M人×1/10×$10 = $54Mとなって、今年の売上高である$60Mに近い数字が出てくる。
Skypeが今後、世界で2億人(200M人)のユーザを獲得したとしよう。このとき、売上高はざっくり言って200M人 × 1/10 × $10 = $200M(2億ドル) となる。このうち約半分が諸経費等に使われるとして、毎年$100M(1億ドル)のキャッシュフローが生まれる計算だ。今回の買収額である$2,600Mはこの毎年生まれるキャッシュフローの26倍、つまり26年分となる。ちょっと乱暴だが、この程度のPERはよくある数字なのでそれ程割高とも思えない。
Skypeユーザが2億人になる日が来るかわからないが、全ブロードバンドユーザの何割かがSkypeユーザになりえると考えると、ありえない数字ではないと見る。
次に、eBayの顧客獲得コストの観点で見てみよう。
買収金額が$2,600M、現在のSkypeユーザ数は54Mなので、他の要因を一切無視すると、eBayはSkypeユーザを一人当たり $2,600M ÷ 54M = $48ドル で買ったと見ることが出来る。1998年、インターネットバルブ初期のドットコム企業の平均顧客獲得コストは約33ドルだったという。これがピーク時の99年には71ドルになったようだ。さすがにこのコストは高すぎて、これが原因となって破綻したドットコム企業も多かったようだ。そうしたことを考えると、現在の会員数を元に計算した48ドルという数字は少々高めではある。でもこの数字は先に述べた将来のキャッシュフローの影響や今後の顧客獲得の潜在力などを加味していない。
上記の二つ、つまり将来のキャッシュフローや顧客獲得コストをあわせて考えると、26億ドルという数字は決して高いものではない気がしてくる。
前提として下記を満たさないとならないだろう。
- 将来、億単位のユーザーを獲得できること
- ユーザー1人あたり年間1ドル(10人あたり10ドル)消費してくれるよう商品力を高めること
- Skypeユーザのうちの何割かがeBayの新規ユーザになってくれること
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