日経新聞9月19日朝刊の「日本のIT、遅すぎた海外進出」の中に気になる記述があった。
...米ベンチャー誌「レッドへリング」が最新号で「アジアの未公開企業百社」を特集したが、日本企業は九社しかなかった。中国四十一社、インド十九社、韓国十社についで第四位」...
確かにアメリカのメディアでは連日中国やインドの話をよく目にするが、日系企業が話題になることはほとんどない。実際にどんな企業がランクインしているか、興味がある人は確かめて欲しい。少なくとも西側世界の視点ではこういう状態だという現状がお分かり頂けると思う。
Red Herring 100 Private Companies in Asia
日経新聞の同記事によると、日系企業のランクインが少ない理由を、日本のIT企業の多くは「内向き」で日本でしか通用しない分野の企業が多いからだと分析し、もっと世界に目を向けようと訴えている。日本のIPO市場に公開した企業の内訳を見ると日本国内だけで事業を行うサービス業やコンテンツ業が多いようで、世界レベルで活動している企業はあまり思い当たらないことを考えると、説得力のある記事だと思う。
では、日本の企業は本当に世界の中で競争力がないのだろうか?個人的には決してそんなことはないと思っている。
日本には世界最高水準の技術が多数ある。自動車、デジタル家電、ロボット、繊維、建設・土木、産業機械、造船、繊細な製造技術など、世界的な競争力を持つ企業をいくつも思い起こせる。そうした企業には優れたエンジニアが多数おり、貴重なノウハウがあるはずだ。
また、サービス業の分野でも日本のサービス業は世界最高水準の品質を持っているはずだ。サービス業は一見海外では通用しにくいように見えるが、それでもSECOM等、海外で成功しているサービス企業もあると聞く。ブックオフ等の純日本的な企業が海外進出しているというのも頼もしい話だ。
ベンチャーに携わるものとしては、是非この状況を変えて、世界的に見ても日本を強い国にしたいと思うのであるが、それにはどうしたらいいのだろうか?
①起業家マインド、②事業支援、③財務支援、の観点から見てみたい。
「起業家マインド」とは、起業する人の気概というような意味で使っているが、抽象的なので、単純に「起業数」と言い換えてもいいだろう。日本は起業が少ないのだろうか? 米国商務省、日本のVEC等を調べるとこうなっている。
- 米国開業数: 572千社(2003年)
- 日本開業数: 260千社(2004年)
アメリカと日本の人口比やGDP比がほぼ2:1であることを考えると、日本は決して開業数が少ないとは言えないのである。しかも2004年度の公開企業数(VC投資を受けた企業のみ)を見るとこうなるようだ。
- 米国IPO数: 67社(2004年)
- 日本IPO数: 172社(2004年、推定)
若干信頼性を欠く数字ではあるが、大雑把に言って日本はアメリカより圧倒的に公開しやすい環境であることがわかる。こうして見てくると、日本は決して企業マインドが低いとは言えず、むしろ世界的に見てもベンチャー企業にとって好環境であると言えそうだ。
では、なぜそんな日本から世界レベルの企業が出てこないのであろうか? 起業マインドというよりは、起業の中身の問題かも知れない。言葉の課題、地理的な課題、スコープの大きさと言った課題がありそうだ。それぞれ大きな課題だが、特に3つ目のスコープの大きさが関係してきそうだ。スコープの大きさとは、町レベルの企業を目指すか、国レベルか、世界レベルか、そういった戦う市場の大きさの意味で使っている。
欧米諸国では、30~100億円程の投資を行って世界レベルを目指す技術開発型のベンチャー企業が多い。別にお金をふんだんに使いなさいと言うつもりはないが、世界レベルを目指すにはある程度の軍資金が必要になるのも事実だろう。多額の軍資金を集めるに足る魅力的なビジネスプラン、経験豊富な経営陣、株主の支援がないと実現しない。そういう意味で、日本ではこれまで大きなスコープを持つ起業家なり、その起業家を支援する体制が弱かったのではないか?
では、スコープの大きさを広げるにはどうしたらいいか?
起業に成功した人達がさらに大きな成功を求めて、新たな起業家として再スタートしてくるのではないかと想像している。そういう人達の周りでは資金も集まり易いだろう。大きなスコープを実現し易い環境が出来てくる。逆説的だが、放っておいてもそういう方向に向かうのではなかろうか。
<続く>
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