投資家をやっていて頭の痛い問題がいくつかある。「所有と経営の分離」もその一つだ。
「株式会社」というシステムは、株主が出資金を出して会社の所有者になる一方、会社の経営を経営者に委託するシステムだ。このシステムでは、経営者は所有者の信任を得られないと辞めさせられることとなるため、信任を得ようと努力せざるを得ない状態に置かれる。所有者も経営者が自分の目の見えないところで私服を肥やしていないかチェックの目を光らせることとなる。その結果、この両者の間に微妙な緊張感が生まれることとなる。
と、ここまでは教科書的な話なのだが、ベンチャー企業の場合には教科書的なことばかりを言っていられない。何しろ経営資源の乏しいベンチャー企業では慢性的な人員不足で、あちこちに目を覆いたくなるようなオペレーション上の不備があり、株主としても放っておけなくなるのだ。
さらに、株主である自分が、自分のコネで知り合いにベンチャー企業を紹介した日には、うまく仕事をしてくれるかとても心配になって電話の一つもかけたくなってしまう。そんなことを繰り返しているうちに、所有者である自分自身がいつしか経営に関与し、場合によっては重要なウェートを占めるようになってしまう。
これのどこが悪いのか?
一見、美談に聞こえるこの話は、物事が順調に進んでいる時にはとても綺麗に聞こえる。しかしながら、自分が経営に絡んでしまった会社の経営が傾き出すとややこしいことになる。何しろ、自分はその会社の所有者だから、自分で自分の首を切るわけにはいかない。まして経営陣に「あなたは所有者かも知れないけど、経営にも加担した訳だからあなたの責任でもあるでしょう」と開き直られたら目も当てられない。だからそんなことにならないよう、所有者が経営に関する場合には一線を引かざるを得ないところが出てきてしまうのだ。
ベンチャーキャピタルが投資先の企業を支援するって、口で言うほど簡単ではないのですよ。
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