公開企業と未公開企業の本質的な違いは何であろうか。それは、発行会社と株主との間の「情報の非対称性」が大きいか少ないか、ということなのかも知れない。
公開企業は、だれでも株式を購入できることが前提となっており、これを実現するために各種制度、たとえば会計基準が決められ、情報開示が義務付けられており、、そうした開示情報を理解したうえで誰でも(安心して)株式を売買出来るようなシステムになっているわけだ。
しかし、公開企業がIRでどれだけ細かく情報を開示したとしても、発行会社の情報をすべて開示しつくすことは出来ない。たとえば、営業の現場でどのようなことが起きているか、会社の内部にいる人(インサイダー)にはわかっているが、外にいる人(アウトサイダー)にそれらのすべてが開示されるわけでもなく、情報量に差ができてしまい、情報が非対称にならざるを得ない。だからこそ、インサイダーの株式売買は厳しく規制される。アウトサイダーは、開示される情報を元に株を買ったり売ったりするわけだが、開示情報に載っていないことは知る由もない。
一方の未公開企業は、極論すれば株主も経営陣も含めて関係者はすべてインサイダーであり、株主と経営陣との間の情報の非対称性は少ない。株主と経営者は関係が深いことが多く、特に急成長を目指すベンチャー企業では株主が積極的に経営にかかわって支援することがしばしば行われたりしており、株主と経営が部分的に同一なものと見ることが出来る。「インサイダー」というと、なんだかイメージが良くないが、難しい市場環境の中で事業を拡大させるには、株主も経営陣も一体となって総力戦で経営にあたる方が機動的に動けるものだ。
公開企業には、資金調達しやすいとか、社会的な信用がアップするとか、取引がしやすくなるとか、いろいろとメリットもある。しかし、昨今の日本の株式市場の低迷には、「日本の会社が成長するように見えない」という漠然としたイメージがあるのではないか。いくらIRで示したところで、ビジネスの現場で行われていることは伝えきれない。公開企業であるよりも未公開企業である方が機動的な経営が出来る場合もあるかも知れない。
日経ビジネスの最新号で「新興市場は壊死寸前」なんて書かれているが、場合によっては非公開化を伴う再出発のような話が増えるのが必然なのかもしれない。
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