先週の世界的な株式市場の大幅下落により、米国経済に対する悲観論があちこちでささやかれているが、そんな中でも米国のPrivate Equity Fundの設立額はそれ程衰えていないらしい。PE分野への資金供給はまだ細っていない。興味深いことだ。
引用: PE Fund-Raising Still Going Strong. Buyout Shops, Not So Much WSJ誌 2008/10/7
... Three-quarters of the way through the year, fund-raising by North American private-equity firms–a category that includes buyout, venture capital, mezzanine, distressed and several other types of firms–is ahead of last year’s pace. Through the end of September, 264 funds had raked in $222.6 billion, well ahead of the $200.4 billion raised by 298 funds at this time last year, according to data from LPSource.
Wall Street Jounalが報じたところでは、2008年6-9月期の北米のPEファンド(Buyout、VC、メザニン、ディストレスなどを含む)の設立額は、前年同期の$200.4Bよりも約1割多い$222.6Bになったという。PE業界全体への資金供給量は前年よりも多いわけだ。
しかし、ファンドの種類別に状況をみるとそれぞれ事情は異なってくる。
That isn’t to say they aren’t hedging their bets. Buyout firms, which have been hardest hit by the credit crunch, raised $103.3 billion across 77 funds, down 12% from 98 funds that raised $118 billion last year. And venture capital fund-raising was flat, with 107 funds raising $19.7 billion compared with 103 funds raising $19 billion a year earlier.
最も多くの資金を集めてきたBuyoutは、金融不安の影響を最も受けて前期比約1割減となった。また、VCは前年並みだという。これに対して、積極的に資金を集めているのはメザニンやディストレスだ。
Mezzanine funds, which invest in debt that also carries characteristics of equity, continue to have a strong year, gathering in $36.9 billion across 13 funds, compared with the $3 billion across nine funds through the third quarter of last year. Distressed firms also have well exceeded last year’s total through the third quarter. Eighteen funds have raised $37.9 billion, up 28% from $29.5 billion raised by 16 funds at this time last year.
メザニンとは、デッドとエクイティの中間に位置づけられるもので、劣後債や優先株式などを使った投資手法だ。メザニンファンドはエクイティではなくこうしたデットに近いファイナンスを得意とするファンドのことで、VCよりも大型の企業に投資することが多い。ファンド設立額は前年より10倍以上の規模に膨らんでおり、VCファンド設立額の2倍近くを集めている。
昨今の株式相場低迷でIPO市場が機能せず、またM&Aも主要投資銀行が経営難になる中で仲介業者や資金共有者が消極的になっていると思われる。つまり、多くの未公開企業にとって今はIPOやM&Aが難しい時期なのだが、株式公開できる水準にある未公開企業にとってはメザニンは株式公開に代わる新たな資金調達手段を提供しているということなのだろう。時代のニーズをうまく捕えている。
また、ディストレスは経営難にある企業などの買い取りを専門としたファンドで、イメージは良くないが、大手ファンドもディストレスの分野に乗り出している(カーライルの例)。ディストレス分野のファンドの設立額は前年比28%アップだという。不良資産であっても、投資の仕方によっては経済合理性があるのだろう。こうした分野で活躍するファンドが多数存在するあたり、アメリカ資本主義の層の厚さを感じてしまう。
時代の流れに合わせて求められる金融手法は変わってくるのかも知れない。こうしたダイナミックな動きをみていると、アメリカの金融界もどっこいしぶとく生き残り続けるのだろうと、なんとなく思ってしまう。
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