株式会社においては所有と経営が分離されている。例えば、証券取引所に上場されている株式を購入すれば誰でも上場企業の株主になることができるが、その上場企業の経営は、株主から選任された取締役が行うことになっており、株を買った人が経営するわけではない。これが「所有と経営の分離」だ。(さらに詳しいことを知りたい方はこちらがよくまとまっている)
この所有と経営の分離において重要なことは、株主は経営に関与しない代わりに、取締役を選任する権利を持つということだ。この権利を株主が持つために、取締役は常に株主の信任を得ようと努力するよう動機付けられる。これが株式会社のコーポレートガバナンスの根幹を成す原理だ。
ところが、所有と経営が明確に分離され、きちんとコーポレートガバナンスが効く場合ばかりではない。
上場企業であれば所有と経営が分離されていることが多い(もっとも、創業者が多くの持株を保有し続けていたり、取締役がストックオプションを通じて株式を保有するなど、かならずしも所有と経営が明確に分かれていないところもある)。これに対して、ベンチャー企業などの未公開企業では所有と経営が明確に分離してないことが多い。つまり、大株主がそのまま経営に当たっている例が多いということだ。
ベンチャーであればある意味当たり前なのだが、所有と経営が分離してないということは、メリットになる面もあるが、デメリットもありえるので、そのあたりをきちんと理解しておくことが重要だろう。その辺りを考えてみたい。
ベンチャー企業の株式の形態は、大きく言えば下記のように分類することができよう。
- オーナー経営者型: 創業経営者が単独で過半数の株式を所有
- 共同経営者型: 経営陣数人が共同で過半数の株式を所有
- 大企業子会社型: 親会社が過半数の株式を所有
- 投資家支配型: VC等の投資家が過半数の株式を所有
1.は創業経営者が過半数の株式を所有することで取締役選任権などの人事権や業務執行権をすべて支配できる型の会社のことを言う。いわゆる「オーナー企業」。
こういう会社では、事業の成否や会社の成長はオーナーの力量に大きく依存する。オーナー経営者の力量がすばらしければ、迅速な意思決定を通じて効率的な経営が可能となるだろう。実際、そうしたカリスマ型の素晴らしい経営者の力量によって急成長を遂げた会社は世の中にいくつも存在する。
しかし、オーナー経営者に問題がある場合は困りものだ。オーナーである創業経営者には誰も逆らえない。取締役や社員がオーナー経営者に逆らったら首になったり窓際に送られたりする可能性があるからだ。だから、オーナーに問題があると感じた者は、オーナーに対してそれを積極的に指摘するよりは、しばしば自らが退職することで消極的に反抗するしか道がなくなってしまう。そういう会社は、大人しい人だけが会社に残ることで一見静かで平和に見える会社が覇気がない会社が多いような気がしている。
VCの立場でもしばしばこの型の会社に接することがあるが、この型の場合にはオーナーの経営者としての力量を如何に見積もるかが投資判断の重要なポイントとなる。
2.の型もしばしば見かける。2~3人ぐらいの創業者達が株を分け合い協力して経営に当たっている例だ。古くはホンダやソニーもこの形だ。IPOする企業の株主構成などを見ていても、この例が少なからず存在するのがわかる。1に比べて経営にブレが少なく、比較的安定しやすいようなイメージを持っている。
3.は日本独特なシステムだが、少なくない。某大手ネット系企業の子会社とか、メディア系企業の子会社とか、多くの企業からベンチャー子会社が出てきている。優秀な人材が大企業にいることの多い日本の状況を考えると、この型も現実的な解だと感じている。
4.は欧米の技術開発型ベンチャーではほとんどの場合これに該当するが、日本ではあまり多くない。これは、VCの比率が高すぎるとベンチャー企業が株式公開した後で市場売却しにくくなるから敬遠される、と説明されることが多いようだ。しかし、世界に通じるベンチャーを育てようと思ったら、多くの資本金を投入して大規模な開発を行うような例も必要になるはず。個人的には日本でもこうした型を増えるべきだと考えている。
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さて、標記の「ベンチャー創業者の持株比率は如何にあるべきか」だが、これにはもちろん正解は無く、きちんとしたデータもないので感覚的な結論になってしまっていて申し訳ないのだが、個人的には多くの場合において2.の型が最も安定感があるのではないかと考えている(どなたか、そのあたりのデータがあったら是非コメントなりトラックバックなりで教えて頂きたい)。
もっとも、ベンチャー経営者の方に言わせれば、意図して型を決めたわけではなく、それぞれが置かれた固有の事情から結果的にそうなってしまった、ということが多いのだろうが、、、
創業は1人よりも2~3人で、ということをお勧めしたい。
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