米国VCの世界でも中国やインドはしばしば話題に上るし、実際中国に進出している米国系大手VCは多い。KPCBやSequoiaもそれらの部類に含まれる。
興味深いことに、中国に進出した米国系VCは必ずしもテクノロジー系企業に絞って投資しているわけではなく、それとは関係のない、きわめて「中国らしい産業」にも投資しているらしい。たとえばこんな事例がある。
VCs in China: Kleiner’s shirt factory, Sequoia’s farm
In the latest example, we’ve learned that Kleiner Perkins, one of Silicon Valley’s most high profile venture capital firms, has joined in a $50 million investment into Yes!PPG, a shirt factory in Shanghai (merchandise to your left). Sequoia, meanwhile, has invested in a farm.
(中略)
Low-tech VC investments in China seem to be a trend. Sequoia Capital, another top Valley firm, has invested in a company called China Linong (picture from web site, below) that grows and sells high-end vegetables. The Sequoia lead on the investment, Neil Shen, told Forbes last year that his philosophy is to “stick to the four necessities: Food, clothes, housing and travel.”
KPCBはシャツの製造会社、Sequoiaは農業(高級野菜)の会社へ投資しているという。Sequoiaは衣・食・住に加えて旅行(交通?)という人間の生活にとって必須の分野に絞り込んで投資しているような雰囲気だ。米国系VCがテクノロジー系ではない企業へ投資するというのはびっくりだ。
日本のVC業界では、テクノロジーとはあまり関係のないビジネスへVCが投資するのは珍しいことではなく、むしろ広く一般的に行われていて、上記の話を聞いてもそれほど違和感ないだろう。新興市場に公開してくるベンチャー企業を見ても、飲食、不動産などのサービス関係の会社がしばしば見受けられる。
しかし、米国ではベンチャー投資といえばほぼテクノロジー企業へ投資することを意味する。たとえばVentureOne等の統計を見ると、テクノロジー系ではない企業への投資はそれほど多くない。2006年に米国で行われたVC投資件数2,549件のうち、"Business/Consumer/Retail"分野への投資件数は275件と全体の約1割余りにとどまる。しかも、そのうちの大半はメディアやコンテンツ業で、ある意味ネットなどのIT系に関連してくるので、これを除くと100件に満たない(以上、VentureOne調べ)。「テクノロジー系でないベンチャー企業」の定義によるが、VC業界全体の1割以下と見て良さそうだ。
さらに、KPCBを中心とするTop TierのVCはそうしたテクノロジー系ベンチャーへ投資し成功してきたことで名を成してきた。Genentech, Sun, Netscape, Amazon, GoogleなどはみなKPCBが投資・支援し、新しい分野を切り開いてきた企業だ。
そうやって新しい世界を作ってきたKPCBやSequoiaの新たな取り組みはいろいろな意味で注目される。世界的にVC業界を取り巻く環境が変わりつつあるということの証左かもしれない。
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