今回からしばらくベンチャーキャピタル投資論を展開してみたい。ベンチャーキャピタル(以下、VC)という言葉を聞いたことはあっても実際にVCとつきあったことのない人、VCをもっと知りたい人、といった方々を想定しているので、VCをよくご存知の方は読み飛ばしてもらいたい。
まず、ベンチャーキャピタルとは何だろうか。いろいろな説明の仕方があると思うが、いくつか外すことの出来ないポイントがある。
1.成長志向の強いベンチャー企業に対して
2.成長資金を投資する投資家
上記を理解するには「VCモデル」を理解する必要がある。VCモデルとは、
- VCは手元資金を使っていくつかの企業に投資する
- 投資した企業のうち、いくつかは破綻して回収が出来なることがある
- 投資した企業のうち、いつくかは大きく成長して多額の収益を投資家に還元してくれる
上記のプロセスを通じて、VCは全体として高い利益を追求するわけだ。リスクの高いベンチャー企業に投資する以上、破綻はつきもの。しかし中には大きく成長して収益をもたらしてくれる企業がある。そうした成長企業のおかげでVCは全体としてプラスのリターンを期待できるわけで、これがVCが存在しうる根本原理だ。大きく成長して大きな果実を投資家に提供してくれる企業があるからこそVCはリスクを取れる。逆に言えば、成長志向の強くない企業、成長が見込めない企業にはVCは投資できないわけだ。
このように「VCは成長志向の強いベンチャーにしか投資しない」というのはVCを理解する上で重要だ。VCは何でもかんでも投資するわけではないのだ。また、大きな成長を期待するので、基本的には資金は「融資」ではなく「投資」の形で提供する。これもVCの特徴だ。
また、VCには上記のほかに重要な機能がある。
3.投資した企業の成長を促進するために、VCは投資先企業の事業を積極的に支援する
これもVCの重要な機能だ。これこそがまさにVCの名声を高めているとも言える。米国あたりの著名VCではこれは必須の機能だ。米国に限らず、日本でも欧州でも多くのVCがこれに取り組もうとしている。だが現実は甘くない。投資先企業の事業を支援するとは言っても、一朝一夕に成果が上がるものではないようだ。
1.2.の金融的性格と、3.のようなコンサルタント的性格のどちらの性格が強いかはVCによって様々で、いろいろな考え方がある。1.2.を主眼とするVCがある一方で3.に注力するVCもある。そのあたりの考え方の違いを探るにはいくつかのVCを訪ね歩くのがいいだろう。特に起業家の方がVCから出資を受ける際には、そのVCが上記1.2.と3.についてどのあたりのスタンスを取っているのかあらかじめ理解しておくのは重要だろう。
もう一つ、VCとは何かを語る上で重要な項目だが、
4.VCは機関投資家などから資金を集めてファンドを運営していることが多い
ということを知っておくといいだろう。つまり、VCは機関投資家からお金を「預かって」「運用している」わけだ。ファンドには「満期」が設けられていることが多い(専門用語で償還という)が、この満期の存在もVCの行動に非常に大きく影響を及ぼしてくる。VCをこのような「ファンド運用者」として捕らえることはVCの本質を理解する上で極めて重要だ。このあたりは次回説明するとしよう。
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