資本政策は増資を考えているVBには必須の概念だ。資本政策とは、資金調達と、資金調達によって影響を受ける経営権や株主利益等への影響とを総合的にプランニングすることだ。
増資によって資金調達すると新たに株式を発行することになる。新たに株式を発行すれば、その増資より前に発行されていた株式が増資後の株式全体に占める割合は、新しい株式を発行した分だけ少なくなる。増資前から株式を持っている株主は、増資によって持株比率が低下することになるわけだ。これを希薄化という。
例えば、ある人が100%自己資金で会社を創業しても、その後第三者の出資金を受け入れて株式を発行すると、その会社はもはや100%創業者のものではない。増資額が大きければ大きいほど創業者の持株比率は低下する。どんどん増資してどんどん持株比率が低下し、創業者の持株比率が過半数を割り込むようだと経営にも影響が出てくる。自分ひとりで物事を決められなくなるのだ。
そこで、下記のような観点で資金調達を計画することが求められるのだ。
- 資金調達と、資金調達の影響(経営権、株主利益等)をバランスさせること
- 会社の発展段階に応じた計画的な資金調達を行うこと
- 投資家への出口、安定株主対策、創業者利益、インセンティブを確保すること
資本政策はそれぞれの会社のおかれた状況や株主の思いによってゴールが変わる。絶対的な正解はない。大雑把に資金調達をしても、後で微調整が効く部分もある。しかし、いくつかはずしてはならないポイントがある。その中でも最も重要なのは下記の点だろう。
- 会社が自立的に成長していくまでにいくら資金調達しなければならないか
- 創業者は経営権をどの程度確保したいか
そして、しばしば下記のようなことが資本政策上の課題になるように思われる。
- 多額の資金調達を行う場合の経営権の確保(特に技術開発系VBでは大きな問題)
- 各投資ラウンドにおけるバリュエーションの設定方法
- ストックオプションと税金の関係
資本政策には様々なパターンがありえるが、しばしば見受けられるのは資金調達を何回かに分割することだ。一度に多数の株式を発行するのではなくて小出しにし、会社の価値が高まる都度少ない株式を発行して資金調達することで、第三者に渡す株式の数を出来るだけ減らすわけだ。技術開発型VBではほとんど必須の資金調達法だろう。このように分割された資金調達のことを便宜上「投資ラウンド」という。海外では、便宜上Aラウンド、Bラウンドなどとアルファベットをつけて呼ぶことが多い(これはそれぞれ優先順位が異なる優先株を発行するからでもある。詳しいことはいずれ別の機会に説明しよう)。
さらに詳しく知りたい方は、身の回りのVB経験者、VC、税理士等に相談するのがいいでしょう。独学で勉強されたい方にはVECのサイトなどがお勧めです。
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