ベンチャー投資家の中にはコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)と呼ばれる投資家がいる。事業系企業が戦略的メリットと金銭的メリットの両方(もしくは片方)を狙って運営することが多い。中でもIntelの活動が活発だが、Intel以外にも半導体系、コンピューター系、化学系、医療系等の名だたる名門企業がCVC部門を持っている。日系企業でもソニー、松下、日立等が有名だ。
そんな中で、IBM VCは異色の存在だ。こんな記事があるので紹介しよう。
IBM's Venture Capital Group does not manage a fund as do other VC organizations. The company doesn't even have a strategic VC fund such as Intel, which makes billions of dollars in investments. Instead, it tells the VC community, and the startups, what types of technologies it is interested in, and the direction of its business strategies.
IBM Venture Capital Groupは投資しない。投資のためのファンドも運営していない。その代わり、IBM VCは他のVCやベンチャー企業に対してIBMが興味を持っている技術やIBMの事業戦略の方向性を伝える。
Then it waits for the magic innovation engine of Silicon Valley to spit out companies with technologies that it can leverage across its global business platform.
そして、IBMの望む分野のベンチャー企業がシリコンバレーから生まれてくるのを待つ。そうしたベンチャーが出てきたら、その企業を買収してしまう、というわけだ。
It is a sweet deal for IBM since it doesn't have to identify, and invest in startups, and help grow them into larger businesses--the Silicon Valley VC community does it all for them and with their own money.
つまり、IBMは自らベンチャー企業を探し回ることもせず、投資もしない。でもIBMがささやけば、シリコンバレーのVCコミュニティはIBMが望む方向に彼らの資金を振り向ける。IBMが事業パートナーになってくれるかも知れない、買収してくれるかも知れないとなったら、多くのベンチャーがその方向を目指すだろう。首尾よく投資したベンチャー企業が成長してIBMに買収してもらえればVCとしてもハッピーなわけだ。実際、IBMはこの手で多くの企業を買収しているようだ。
VCコミュニティは自らの資金でIBMの戦略を支援し、IBMはVCに出口を与えることでVCを支援している。相思相愛でWin-Winな形だ。買収するのも楽ではなかろうが、場合によっては自ら研究開発するよりも効率がいいかも知れない。
IBMのこの手法は、もっと日本の大企業に応用される余地があるのではなかろうか。
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