オープンソースを使ったCRMソフトのニューリーダー、Salesforce.comのCSO(Chief Strategy Officer)であるTien Tzuo氏がBusiness Weekのインタビューに答えて成功の秘訣の一端を明かしている(原文はこちら)。記事はマーケティング系の話が中心だが、例えばこんな具合だ。
"Our whole marketing strategy is about PR, buzz," which involves targeting technology reporters with top publications and blogs "instead of educating Gartner" or other market-analyst firms, he says.
ガートナーと言えばIT技術リサーチの分野でトップクラスの専門家集団だ。ユーザーが新しい技術を導入する際、技術の将来動向を知ろうと思ったらガートナーの出番だ。ガートナーのアナリストの話を聞けば向こう3~5年間ぐらいの凡その技術動向がわかったような気になる。そうしたガートナーの権威を逆手にとって、新しい技術が出来たらまずはそれをガートナーに売り込み、ガートナーの口からユーザーに紹介してもらうというのが一つのプロダクト・マーケティング戦略として定着しているのだろう。しかしSalesforce.comではガートナーではなく、パブリシティやブログを活用したようだ。90年代、技術戦略を立てる際に必要となる「インテリジェンス」と言えばもっぱらガートナーの独壇場だったのかも知れないが、今日ではブログやその他の「草の根」的な情報ソースが発展してきたことで、技術戦略のインテリジェンスとして「口コミ」も有効になってきたと言うことかも知れない。
続いて、こんなコメントもある。
I would rather put [investment] into our Web site…than into a direct-marketing campaign." As part of that effort, the company decided that the best way to turn visitors into serious prospects was to offer trial use of the product. "The sales force resisted," Tzuo says. "That was the best thing we ever did…to let customers test-drive it."
マーケティング・キャンペーンに費用を使うのではなくウェブサイトの構築に金をかけた、つまり、Webサイトに来てくれた「一見さん」を逃がすことなく取り込んでテストドライブまで持っていけるよう、ウェブサイトの構築に注力した、と言っている。このコメントは面白い。2000年頃のネットバブルの頃、メディアミックスと称してネットビジネスのマーケティング・ツールにTVコマーシャルや紙媒体を使って華々しくキャンペーンを行うベンチャーが数多く存在した時期があったが、このコメントが言っているのは、そんなことに金を使うよりも、ウェブサイトの品質向上に金を使った方がいいかもよ、ということだ。さすがに最近では一頃のような大々的なマーケティングキャンペーンを張るネットベンチャーは見かけなくなったことから見ると、Tzuo氏が述べているようなことは半ば暗黙の了解として常識化しているのだろうか。
そのほか、経営陣はSalesforce.comに営業部隊は不要だと考えていた節があるが、実際には見込み客をフォローして売り込むためのテレセールス部隊が必要だったこと、当初は中小企業相手にビジネスしようとしていた(オープンソースのため、安かろう悪かろうのイメージがある?)が、ふたを開けてみたら大企業が飛びついたらしい。
ビジネスというのはなかなか予定どおりには行かないもののようだ。
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