たびたびIntelネタで恐縮だが、Intelが汎用チップを特定用途向けに最適化させるようだ。日経BP社の報道によると、IntelはSAPなどのエンタープライズソフト向けにチューニングした一種のアクセラレーターを開発しているようだ。
半導体ビジネスというのは本質的にコピーのビジネスだ。設計開発に多額のコストをかけて型枠をつくり、この型枠を何回もプレスして複製品を作って販売するビジネスだ。だから、一度出来上がった型枠は改変せずに長期にわたって使い続けたほうが儲かるわけだ。Intelは汎用プロセッサという極めて汎用に使われる製品の型枠の分野で覇者となり、膨大な数のコピーを作って世界中に販売することでその強大な地位を築いてきたわけだ。
ところが、汎用品は必ずしもパフォーマンスがいいわけではない。使い方によっては冗長な部分、つまり無駄が発生する。より高度なパフォーマンスを実現しようと思ったら汎用品ではなくその用途に最適化された設計、つまり特定用途向けの設計の方が都合がいいことが多い。ここに特定用途向け製品市場の存在意義があるわけだ。
コンピューターというのは、ソフトウェアを入れ替えるだけでどんな作業もこなすわけで、その意味でコンピュータのハードウェアは本質的に汎用品といえる。しかし、エンタープライズソフトの分野でユーザがサーバーを新規購入するときには何に使うか用途を決めて買うことが多いはずで、サーバーに求められる機能は本質的に単機能なのだ。だから、コンピュータのハードウェアはユーザが求める機能を最高のパフォーマンスで処理できるよう最適化されている方が望ましい。
だったらユーザーが望むように、特定の機能に最適化できるようにしましょう、というのがIntelの今回のアプローチなのだろう。
何のことはない、これまでパソコンの中でグラフィックやオーディオなどに使われていたアクセラレーターを、エンタープライズ・アプリケーション用に作りましょうということだ。アクセラレーター自体はよくあるものだが、エンタープライズの世界ではこういう発想をした会社を聞いたことがないので、その意味でとても新鮮だ。
こうした動きは、汎用品ビジネスだけでは限界が見えてきた、あるいは汎用品そのもののパフォーマンスアップに限界が見えてきたから、ということではないか。だったら、既に出来上がっているCPUの型枠はそのままに、アクセラレーターで特定用途向けに最適化することで、ユーザにはより高度なパフォーマンスを享受してもらおうということで、半導体ビジネスの本質をよく理解したIntelならではの非常に優れた経営判断だと見る。
いやあ、SAP用アクセレーターボードですか!
うーん、1枚(で済むかわからんが^^;)1000万円でも、パフォーマンス・チューニングのコンサルを受けるよりも安いでしょうね。ん? 待てよ、プライシングそのものが、それらのコンサルにかかる費用を参考するかも。
コンピュータの黎明期には目的業務ごとにマシンが作られたのを、ソフトで汎用化するためにシステム360が登場(ちなみに360度業務に対応するから360なんだそうです)しましたが、また、何十年も経って業務ごとにマシンが特化していく時代が来ましたか。
Webシステムがメインフレーム時代のホストとダム端末と同じようなアーキテクチャーになったように、技術内容やレベルは変わっても、潮流が戻りながらってのは面白い現象ですよね。
投稿情報: 鶴見 | 2006年10 月 6日 (金) 10:15