今年に入ってたびたび「米国のVCからは資金を受けたくない」という起業家の話を聞く。米国VC市場の動向を見る限り、多くのVCが次々とベンチャー企業に投資しているように見えるので、「VCから資金を受けたくない」なんていうことを言う起業家は少数派なのだろう。それでも、米国にいながら米国のVCからは資金を受けたくないというのは少々気になる発言だ。
なぜ彼らは米国VCの資金を受けたがらないか、、、話を総合するとこんなところのようだ。
- 多額の出資金は不要。出資は戦略的に意味のある投資家だけに絞り込みたい。
- 米国VCは多額の出資をして高い持株比率を維持したがるが、経営権は渡したくない。
- 米国VCは投資した会社の業績がうまくいかないとすぐにその会社の経営陣を入れ替えようとする。せっかく苦労して創業したのにVCの論理で会社を追われるのはごめんだ。
- 米国VCに戦略的価値はあるのか?
彼らは米国VCが持つ資金力や経営への関与の度合いについては理解しながらも、事業がうまく行かなかった場合に我が身に起こるであろう悲劇を心配しているようだ。身を以って米国VCの洗礼を受けたのかもしれないし、洗礼を受けた人の噂を聞いただけなのかもしれない。恐らく2000年以降の苦境の中で投資先を見捨てざるを得なかったVCも少なくないはずだし、経営陣の入れ替えに走ったVCも多かっただろう。身近にそんなことが起こったとしたらVC嫌いになるのもわかる。
2年程前にこんな話を聞いた。「2000年以降の不景気の中でVCの淘汰が進行中だ。今後はますますVCの選別が進み勝ち組と負け組の差がはっきりしてくるだろう。今後生き残れるVCの条件は、①圧倒的な資金力を持つVC、②戦略的価値の高いVC、③特定地域に特化したVCだ」。なるほど一理ありそうだ。③はあまりぴんとこないが、①②については納得出来る。景気が回復した2004年以降の新たにVCファンドを立ち上げることが出来たVCは(勝ち組かどうかはわからないがとりあえず)生き残ったと言えるだろう。①と②の性質があったのか、あるいはそれ以外の要因があったのか。。。そうして生き残ったVCの間で現在も激しい競争が進行中だ。
現在では米国VC業界はとりあえず正常な状態になってきてはいるものの、投資資金に関する限り大きく成長している感じはせず、どちらかというと安定している。米国VC業界は成長市場ではなく成熟市場に近いのではないか。そうだとすると、今後も引き続きVCの選別が進むのだろう。VCとしての価値を高め、冒頭に挙げたような「米国のVCから資金を受けたくない」という人を如何に取り込んでいけるかが課題になるだろう。
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