先日、技術系ベンチャーの経営者と話をしていて、彼の経営上のポリシーに感銘を受けた。
彼のポリシーは「実現できるものしか売らない、実現できないものは売らない」というものだ。
これは当たり前のことだ。でも、ベンチャー企業においてこれは当たり前でなく、「実現できるかどうかまだ確かではないが、なんとかなるだろうからやってしまえ」式のところが少なからずあるものだ。資金が限られているので100%の確実性は求めずに、むしろスピードを重視して100%完全ではなくとも「えいやぁ」で資金調達するなり顧客への販売を開始してしまう。これはマーケティング指向が強い考え方とでも言おうか。
タイトな資金繰りを考えると、このマーケティング指向の考え方にも一理あって、実際多くのベンチャー企業がこうした指向を少なからず持つものだ。しかし、問題も多い。技術開発が難航して事業計画全体が遅れることは良くあることで、遅れるだけならまだしも開発計画そのものを撤回・転向する例も見受けられる。マーケティング指向で事業を進めて事業が遅れたり撤回したりすれば、顧客や投資家の評判に大きな傷を付ける。成長段階の業界にあってはそんな多少の傷には目を瞑って拾ってくれる顧客もあろうが、IT業界全体が一種の成熟産業になった今、IT業界においてはこうした無茶は危険が伴う。
このようなマーケティング指向の考え方に対して、彼のポリシーはより現実主義で、地に足のついたものと言えるだろう。彼が作る事業計画は製品のポテンシャルを考えるとコンサバに感じることがあるが、すばらしいことに彼の会社はそれをほぼ計画通りに達成してきている。社員の意識も高く、いいチームとしてまとまっている。
こういう経営者とはとても安心してつきあうことが出来るものだ。
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