オープンソース化の話を続けてみたい。
オープンソース化が進むとどんなことが起こるのだろうか?
まず、ソフトウェア企業のビジネスモデルが違ってくるはずだ。
クローズな世界でのソフトウェアビジネスは、ソフトウェアの内容を外部には公開せず、利用者したいユーザーからライセンス料を徴収することで成り立っている。たとえばパソコンのユーザーは、パソコンショップに行って自分の欲っするソフトウェアを買い(この時点でライセンス料を払う)、自分のパソコンにインストールして使うが、ソフトウェアをパソコンにインストールしただけではユーザーにはソフトウェアの中身であるプログラムは見えないようになっている。このようにユーザーにはソフトウェアの中身を見せないところがクローズな世界でビジネスしていく上で重要なポイントだ。
クローズな世界での基本戦略は、顧客を「囲い込む」ことだ。たとえばパソコンOS業界で業界標準を取っているM社の戦略は、そのOSをPCハードメーカーにバンドル(くっつけて)販売することによってまず顧客を囲い込むことに力点を置いている。顧客はパソコンを買ってM社のOSを使うよう囲い込まれてしまうと、そのOSの世界の中でしか動けない。その事情を利用してM社は自社製OSの上でしか動かないアプリケーションソフト(オフィス製品等)をかなり「強気」の価格で売りつけることが出来るようになる。90年代後半、このビジネスモデルはとても強力に作用し、公正取引委員会から是正勧告が出されるまでになった。
ところがオープンな世界ではソフトウェアの内容は外部に公開されてしまうため、ライセンス料の徴収という考え方はもはや存在しない。代わりに公開されたソフトウェアを使うのに必要なハードウェアやら諸々のサービスを提供することでビジネスを行うように変わっていくのだ。Sun Microsystemsという90年代後半に一世を風靡した企業があったが、2000年以降の業績低迷を受けて、Sunは虎の子のソフトウェアであったSolarisというOSをオープンソース化して話題になったことがある。このときにSunが狙ったのは、Solarisの売り上げを放棄する代わりに、Solarisを動かすためのハードウェアの売り上げを伸ばすことや、Solarisをインストールしたり効率的に動かすための数々のサポートをビジネスにすることで実を取ろうとしたのであろう。これがオープンソース化であり、最近になってこのような動きが増えているように思う。オープン・ソースに関与する企業には、①出来上がったソフトウェアの内容を公開してしまうもの、②公開されたオープンソースをいつくか調達してきて独自の製品を作り、これをクローズな製品として販売するもののの2種類ありそうだ。①には上述したSunのSolarisやLinux等が当てはまる。②の分野ではさらに大きな動きが起きてきているようだ。
また、オープンとクローズでは競争原理が違ってくる。
クローズな世界では、「コモディティ化」が大きな脅威であった。自社の作った製品がコモディティと化してしまうと容易には利益を上げられなくなるからだ。だから、企業は自社製品がコモディティ化しないよう、差別化を繰り返すことによって競争し、発展してきた。
ところがオープンな世界では「コモディティ化」は利益となる。より多くの人が自分の製品を使ってくれることで自分の製品の世界がより早く広がり、ユーザーからのフィードバックによって製品の完成度をより早く高めていくことが出来るからだ。オープンな世界で活動しているソフトウェア企業たちの行動様式はもはや秘密主義ではありえず、オープンソースコミュニティに対して如何に付加価値を提供できたかで判断されるようになるのだろう。
このようにオープンソース化の動きはソフトウェア企業のビジネスを根本から変革するよう要求するものなのだ。こうした動きに対して世界最大手に属する企業も安泰ではなく、地殻変動が起こりつつあると考える。
今年はWindows95からちょうど10年、ソフトウェア業界は新しい時代に入ったのかも知れない。
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