技術というものはだんだん進歩して複雑になると、共通部分と固有部分に分かれて進化していくものらしい。
共通部分というのは、複雑になった仕組みの中から汎用的に使える部分を取り出して一つの独立したパッケージにしたもので、固有部分というのは利用する時の固有の状況に応じて適宜調整するようなものを指す。この共通部分と固有部分をうまく組み合わせれば、容易に何にでも技術を転用できるようになるのだろう。この共通パッケージのことを「プラットフォーム」と呼ぶ。
あなたのパソコンの中で動いているIntelのPentiumは一つのプラットフォーム、その上で動いているWindows OSも一つのプラットフォーム。トヨタのハイブリッド車に搭載されたエンジンもプラットフォーム。楽天市場のオンラインショップも電子商取引のインタフェースを汎用化してパッケージにしたという意味では一つのプラットフォームと呼べるでしょう。このようにプラットフォームというやつは世の中のあらゆる場所と階層に存在し、進化していくものらしい。
今、取り組んでいる半導体ベンチャーの業界はまさにこのプラットフォーム戦争の真っ最中にある。半導体にはムーアの法則というのがあって「半導体チップの集積度は18ヶ月で2倍になる」というもので、1965年に提唱されてからいまだに続いているようだ。その結果、半導体に詰め込めるロジックの量が日増しに増大し、特に携帯電話機などの組込機器市場で著しく半導体が高機能化しているようだ。一説には携帯電話機に使われている半導体の内部には数百万行のプログラムが書かれているという。数百万行といえば、かつて巨大システムの代名詞でもあった都銀の第3次オンラインの規模に匹敵する。数百人が数年かけて作るほどのプログラムの大作だ。Windowsも数百万行ぐらいでしたっけ?(ちょっと記憶が怪しいですが)。。。 そのくらい今の携帯電話に使われている半導体には高度な処理が求めらていて、開発する側も負担も大変なもので、どうやら限界に達したらしい。そのせいか、近年半導体メーカー各社はそれぞれ自社のプラットフォームを開発して懸命に競争をはじめた。
こうしたプラットフォームの勝敗を決めるものはなんだろうか。おそらくは技術的に優位にあることがまずは必要なのでしょう。でも技術だけではだめで、これに優れたマーケティング戦略が伴ってないとうまくいかないこともあるようだ。たとえば抜きん出たユーザーインタフェースを持っていたマッキントッシュは90年代にウィンドウズに完敗したし、一世を風靡したネットスケープのナビゲーターも初期のIEよりはよっぽどさくさく動いたと思うが完全に敗れ去った。
プラットフォーム戦争は大手メーカー同士の総力戦みたいなところがあるので、ベンチャーの身としてはこれに巻き込まれないように固唾を呑んで見守っているしかないのが現実だ。プラットフォーム戦争に定石があれば是非とも知りたいものだ。
ところで、アメリカのナノテク素材のベンチャー企業がプラットフォーム戦略をとっているのを見た。「ナノテク素材のプラットフォーム」というものにはどうもぴんとこない。何を共通化しているのだろうか? 素材の世界は共通化・転用化が容易なんだろうか? どなたか詳しい人に一度じっくり話を聞きたいものです。
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