米Carlyle Groupが年内のIPOを目指しているらしい。
Carlyleは世界有数のPEファンドで、資産規模は1,000億ドルを超える(約8兆円!)。日本でもバイアウト分野を中心に多くの実績を積んでいる超有名ファンドだ。そんなCarlyleがIPOを目指しているという。
引用: Carlyle Aims for IPO to Boost Buyout-Fund Capital, Conway Says
By Cristina Alesci - Dec 7, 2010 12:55 AM GMT+0900William Conway, the deal maker who helped build Carlyle Group into the world’s second-biggest private-equity firm, said the company is gearing up for a public share sale to amass permanent capital and contend with the growing challenge of raising money for buyout funds.
PEファンドの上場は珍しいことではないようで、Blackstone GroupやKohlberg Kravis Roberts & Co.といった大手ファンドも株式市場に上場している。とはいうものの、資金を数年単位で運用するPEファンドが、新たな資金を株式市場から調達するというのはどうも違和感がある。
Carlyleのような世界有数の資産を持つファンドが、IPOでいったい何を狙っているのか。
引用: Carlyle to raise $1bn in weak IPO market
By Henny Sender in New YorkCarlyle, the private equity firm with $108bn under management, plans to raise more than $1bn with a initial public offering of stock but is likely to come to the market with a lower-than-expected valuation, according to bankers familiar with the matter.
FTの記事によると、CarlyleはIPOによって10億ドルの資金調達を狙っているとのこと。この記事を見る限り、資金調達目的のIPOのようだ。私の勝手な想像では、儲かっている大手PEファンドは「投資家、門前に列をなす」ような状況で、いろいろと大変な公募などしなくとも、私募でいくらでも資金が集まるようなイメージを持っていた。しかし、そうした簡易な私募ではなく、公募によって資金を調達したいらしい。
PEファンドが上場することで、公募による資金を調達して新たな投資を行うことで企業価値を高める、という成長シナリオはありえるのだろう。しかし、株式上場後に株主となる人の中には、短期的な株価上昇を狙っている人もいるはずだ。そうした短期思考の投資家から、即効性のある株価上昇策を求められ、ファンド運用が長期思考から転じて短期思考に陥る懸念はないのだろうか。
日本でもしばしば公開企業による「株式の非公開化」が目につくが、そんな際に必ずと言っていいほど登場するのがPEファンドだ。公開会社が、PEファンドの資金によって短期思考の投資家の圧力から解き放たれ、長期的視点に立って更なる成長を目指す、というのが株式非公開化の重要な目的だ。つまり、PEファンド(バイアウトファンド等)は、株式市場よりも長期的な視点に立つことに存在価値があった。そうした、PEファンドが自ら上場して株価変動の波にさらされるとしたら、果たしてPEファンドはこれまでどおり長期的視点に立てるのだろうか?
PEファンドが公募によって資金を調達する際には、こうした短期思考化が懸念されるわけだが、それでも公募に頼らざるを得ないのだとしたら、その理由は何であろうか。
PEファンドを取り巻くマネーの状況が変調してきた、ということだとすると、根が深い。
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