画像処理チップメーカー大手のNvidiaが、3次元グラフィックスのベンチャー企業Rayscale社を買収した。買収額は不詳。この買収はグラフィックス関連技術の動向をあらわすものとして興味深い。
引用記事: Nvidia buys ray-tracing tech company RayScale CNET 2008/5/23
Nvidia confirmed Friday that it has acquired RayScale, a small company that develops ray-tracing technology. Financial terms of the deal have not been disclosed.
Rayscale社はRay Tracing(レイ・トレーシング)というグラフィック技法を使ったソフトウェアを提供している。レイ・トレーシングは、物体の表面に光が当たったときの反射率、透過率、屈折率等を計算してレンダリング(描画)する技法で、現実世界と見まがうようなグラフィックスが出来上がる。
たとえば右のグラフィックスを見て見よう。これはIntelのBlogに掲載された写真だが、上が従来からよく使われたRasterisedという技法、下がレイ・トレーシング技法だ。全体の影、質感、ポットに写った人影など、リアルさが大幅に向上しているのがわかる。
Rayscale社のホームページ上にあるサンプルも見て見よう。透明感のある床、ガラス球やガラステーブルのリアルさは目を見張るものがある。
レイ・トレーシングの技法自体は以前から存在しているようだ(起源は存じませんが)。しかし膨大な計算を要するためか、かつては高価なワークステーション上で動かすものと相場が決まっていて、プロ用向けにしか使われていないものという印象だった。しかし、PlayStation 3に搭載されたCELLのように計算能力に長けた半導体が登場したことで、精度の高いグラフィックスがぐっと身近になった。PlayStation3上で動くソフトがレイ・トレーシングを使っているかどうか私は知らないが、実物と見分けがつかないほど精緻な自動車のグラフィックスを見ると、少なくともPS3が膨大な処理を行えるようになったことがわかる。PS3がコンシューマーのグラフィックスのレベルをかさ上げしたことで、パソコン側もこれについていかなければならない。今回のNvidiaによるRayscale買収はそんな背景があったのではないか。
Ray tracing has been mentioned frequently by Intel over the last six months. An Intel blog titled "Real Time Ray-Tracing: The End of Rasterization?" and later comments by Intel executives that the company is looking at doing ray tracing on its processors set the stage for debate on the viability of ray tracing in mainstream gaming
Intelもリアルタイム・レイトレーシングに興味を持っていたようだ。今回NvidiaがRayscaleの買収に動いたことでIntelも対抗上自社で技術開発するか、買収によって技術を調達する可能性が高い。
今後、半導体の処理能力アップによって、パソコンが作り出す仮想世界はどんどん現実世界に近づくはずだ。5年もしたらどんな仮想世界が広がっているのか楽しみだ。
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