「アクティブなVCの数は6年間で半減してしまった」
こんなセンセーショナルなコメントを米国VCのOVPが掲載している。原文から一部引用させてもらうことにしよう。
In 2000, there were 1156 different venture firms that made at least one new deal. In 2006, there were only 597. This is more like a 50% drop, not just 15%! We think that is the big, so far unwritten, story. The US venture industry has been cut in half. That certainly qualifies as a major shake-out.
2000年には1,156のVCが年間に少なくとも1件以上の投資を行っていたが、2006年にはこれが597まで減ってしまった。投資を続けるアクティブなVCは6年間で半分になってしまったわけだ。
There is one more piece of data we found interesting, and here we and the NVCA are completely in synch. The average size of the most recent fund raised by the venture funds in 2006 was exactly double that of 2000. The 2000 funds came in about $100M, while the 2006 funds were at $200M.
もう一つ注目すべきデータは「ファンドの大きさ」で、2006年に設立されたVCファンドの平均資金量はUS$200百万ドルで、2000年の平均であるUS$100百万ドルの2倍だという。
So, how does this square with the well-reported shrinking of venture funds from the bubble vintage? The story is: Those mega funds were the exception, even though they were very noticeable. There were a gaggle of new funds of the bubble era under $100M. Most of them have died (see shake-out), with a few succeeding and increasing their scale. Since 2000, and particularly recently, there has been a flight to quality.
つまり、2000年頃にはUS$100百万ドル以下の小規模ファンドの設立が相次いでバブルの様相を呈したが、その多くは死に絶え、生き残ったものだけが大きくなった。2000年以降、投資資金の「質への投資」が起きてきた、と結論付けている。
実際、私の身の回りでもこれと似たようはことが少なからず起きており、OVPの説は大いに頷けるところだ。
面白いのは市場の規模が2000年と2006年でほぼ同じであると推測できることだ。この6年間でアクティブに活動するVCの数は半減したが、平均的なVCファンドのサイズは倍増した。つまり、大雑把に言ってVC業界に投じられた資金量は2000年と2006年で大差ないわけだ。もちろん、市場には山や谷があって、殊に2002~2003年頃は市場が極端に冷え込み、多くのVCやVBが窮地に立たされた。そうした地獄の底を見た後で市場はようやく緩やかに回復し、2006年になってようやく2000年頃のレベルまで持ち直してきたわけだ。2006年は2000年に比べて上昇のモーメンタムがあるとは思うが、ファンド設立額で見る限り、この6年間に米国VC市場はあまり成長していない。(なお、市場の規模を見るにはファンド設立額と並んで投資実行額を比べなければならないが、ここでは割愛させていただく)
2000年からの6年間の成長は総じて限られて、つまり、米国VC業界はどうやら「成熟市場」だったようだ。経営戦略の本を紐解けば、成熟市場にあっては市場シェアをめぐって競争が激しくなり淘汰が起こるとある。まさそうした経済原理の典型のようなことが米国VC市場で起こり、アクティブなVCの数が半減し大型化したのだと考えられる。
今後、VC市場が成熟市場のままなのか、再び成長する方向に向かうのか、現時点では予断を許さない。米国を見る限り、資金はITからバイオへ、環境・エネルギーへ、そして海外へと動いている。マネーは国境や産業の壁などものともせず、より大きなリターンを求めて動くものだ。殊にダイナミックさが身上のアメリカでは、資金は今後も利益のあるところへ動いていくことだろう。VCという投資手法を取るかどうかという別の議論もあるが、リターンに見合ったリスクを積極的に取る資金は今後も存在し続けるはずだ。
翻って日本はどうだろうか。最近の日経新聞などにもあるように日本の新興市場への上場企業数は昨年を大幅に下回っているようで、「低調」という感じを拭えない。何とかここで踏ん張らねばなるまい。
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