Intelは半導体起業としてだけではなくベンチャー企業への投資家として有名で、米国の著名VCと同等あるいはこれを上回る規模のベンチャー投資を行っている。最近ではFonalityに投資したようだ。(原文はこちら)
Fonality Inc., creator of a lower-cost office phone system based on open-source software, has raised $7 million in new funding led by the venture capital arm of chip-maker Intel Corp..
FonalityはオープンソースをベースにしたPBX(構内電話交換機)を作っている会社だ。オープンソースが電話の分野にまで進展してきた。そのFonalityへの投資をIntelはリードしたという。
Intel(正確にはIntel Capital)といえは、1年ぐらい前までは代表的なストラテジック・インベスターだった。マイナー投資、つまり1億円ぐらいの比較的小額の資金を多くのベンチャー企業にばら撒くように投資し、その中で芽が出てきた企業を適当なタイミングで買収して取り込んでしまおうという、いわば彼らの研究開発に一環として外部のベンチャー企業を活用するためにベンチャー企業に投資するというスタイルを取っていた。彼らの事業戦略に従って投資を行うという意味で、彼らは典型的な戦略投資家だった。インテルはこのようなマイナー投資の手法を使い、全米ベンチャー投資業界において投資件数で常に首位もしくはそれに近い座を維持してきた。
それがどういうわけか昨年ぐらいからこの小額多数投資のスタイルを転換し、メジャー投資、つまり積極的に投資ラウンドをリードして1件あたりの投資金額を増やすようになった。今回のFonalityへの投資もリード&高額投資のパターンだ。
いったインテルで何が起こっているのか?
一説では組織が変わったとか戦略が変わったとか言われている。インテルの人に直接話を聞いてもあまり核心に触れる答えをもらえていない。個人的な想像だが、小額の資金を多数の企業にばら撒くような投資をしてもあまり成果が出てこなかったということではないか。実際、アメリカのように技術開発系ベンチャーが多い業界では、追加投資、ダウンラウンドということが頻繁に発生することで、小額投資というのは成果を挙げにくい。いくら戦略上の目的達成を目指すといっても、そのために必要なコスト(この場合には投資資金)の回収が不十分だと経営としても問題になりかねない。だから、投資としても成果を挙げやすく、また投資先起業の経営に関与することで自社の戦略にも有利になるように働きかけるメジャー投資に切り替えたのではないか。そんな想像をしている。
こうしたインテルの方向転換は同じような戦略投資を行っている世界のCorporate VCの動向に一石を投じるだろう。
この戦略転換が吉と出るか凶と出るかわからない。メジャー投資を行うからにはベンチャー企業の経営に関与してベンチャーを育成できる人材の確保が重要だろう。インテル・キャピタル出身のキャピタリストは多いが、逆に言えば人材が流出してきたのではないか。質の高いキャピタリストの確保・要請がこの戦略転換の成否の鍵を握ると見ている。
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