技術系ベンチャー企業が事業戦略を考えるとき、しばしば規格の問題にぶつかる。どんな製品やサービスにも「共通規格」と「独自規格」があるわけだが、これらのうちからどちらに即した事業を行うかで事業戦略が大きく分かれてくる。失敗が効かないベンチャー企業には常に大問題だ。
共通規格というのは、業界内で規格化がなされている技術、あるいは既にデファクトスタンダード品が存在して事実上の業界標準が決まっている技術などのことで、前者は例えば無線通信の規格や、音楽やビデオの標準的なフォーマット類(JPEG, MPEG,等)、後者ではWindowsなどが有名なところだ。
一方の独自規格は上記のような規格化・標準化がなされたものに対して意図的に独自の仕様を取り込もうというもので、例えば自社プレーヤーでしか再生できないデジタル処理アルゴリズム(Apple、Sony等が採用)、自社製品にしか使えない記録メディア(SonyのMemory Stick等)等が挙げられよう。これ以外にもAppleのMacintoshだって独自規格だし、ゲーム業界は各勢力が独自規格を作って真っ向からぶつかり合っている。
共通規格を採用すれば、より多くのパートナーや顧客とつながることが出来るが、一方で競合企業が多く、技術やサービスがコモディティ化するスピードも速い傾向がある。
独自規格はその逆で、パートナー開拓や顧客開拓をすべて独力でやらねばならず彼らを説得するまで骨が折れるが、ひとたび事業化に成功すれば比較的緩い競争環境で事業を行うことが出来るので、一般に高めのマージンを期待できる。
ベンチャー企業を見ていると、共通規格採用組と独自規格採用組がそれぞれいるようで、どちらが望ましいかということは一概には言えない。共通規格組は容易に理解されるのでウケがいいが厳しい競争が待っているし、独自規格組は市場性が課題となりやすいが一度理解者を得れれば飛躍の可能性が開ける。
個人的にはベンチャー企業は独自規格の方が取り組みやすいのではないかと持っている。共通規格組は比較的容易に事業を立ち上げることが出来るだろうが、他を圧倒するスピードで成長しない限り、売上が立ち始めるあたりから苦労しそうに思える。"Me too"的なビジネスにはあまり興味を覚えない。
一方の独自規格組だが、これは設立当初から苦労することが多いのだが、そうした難しい設立初期において有力なパートナーと知り合いになっているといずれ救いの手があわられる可能性が開ける。創業前の準備がキーポイントではないかと考えている。
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