足掛け4年に渡ってかかわってきた会社がようやくEXITする。海外の厳しい出口市場にあって何とかEXITできたことだけで純粋に嬉しいし、肩の荷が下りてほっとした。
この会社は欧米にある技術開発型ベンチャーで、技術的に優れたものを持っていたので早い時期から市場の注目を集めてはいた。しかし、実現にはまだ相当の時間がかかると危ぶむ声もあった。僕も投資家として1年間程会社の状況を静観した後、3年ほど前にリード投資家として投資を実行し、以来、取締役としてこの会社の経営にかかわってきた。
その後、たまたま大手日系企業がこの欧米ベンチャーに目をつけたのが2年前。僕はベンチャー企業の側に立ち、日系企業相手に半年近くに及ぶタフな交渉の渦中にいた。日本と欧米諸国の人々の商談の進め方や交渉の仕方はこうも違うものかと悩み、一時は意思疎通の不備から商談が破談しかける場面もあった。このベンチャーの取締役として、また日本人として、この日系企業の役員と小料理屋で直談判してなんとか相手を引きとめ。寝技足技使えるものは何でも使ってどうにか双方を再び交渉のテーブルに着かせ、どうにか商談をまとめさせることが出来た。
この商談が呼び水となって大きく飛躍するかと期待したのも束の間、技術開発が難航して計画が遅れだした。計画どおりに技術開発に成功すれば、多くの商談が期待され、それを見た投資家が殺到して膨大な資金が集まり、さらなる大規模な開発に着手して見る見る事業規模が大きくなって、やがては壮大な夢が現実のものとなるだろうと誰もが期待した。しかし、現実はそんなに簡単ではなかった。
技術開発が遅れた結果、顧客企業との商談が遅れ気味となり、これを見た投資家が躊躇して資金調達が不発に終わり、資金繰りに給することとなった。リストラを行い、内輪から小額の資金を何とか調達して窮地脱出を図った。その後、幸いなことにある企業が買収に興味を示し、再び半年以上に及ぶタフな交渉の末、ようやく双方が合意してベンチャーを買われることとなった。投資してからの3年間というもの、次々に問題が起こるのであまり気が休まらなかったが、この売買完了を以ってようやく一仕事終わった感じだ。
こうした交渉の渦中にいると、いろいろな人間の生き様が見えてくる。いつも冷静な人、論理的な人、近視眼的な人、熱しやすい人、肝が据わっている人、経験豊富な人、、、、この人には敵わないと思う人ばかりだ。僕自身、まだまだ経験が足りないようだ。
成功体験(というには大した成功ではないが)を通して生まれた信頼関係は何者にも変えがたい。このベンチャーを通じて知り合った人とは今後もうまくやっていけそうだ。一生のうちに何回こうした成功にめぐり合えるかわからないが、更なる経験を積んでいきたいものだ。
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